抵当権とは?競売で住宅を手放すことになる前に知っておきたい基礎知識

抵当権 競売

以前から「不動産の購入は一生もの」といわれています。

しかし、最近は多角的な土地利用の促進によって所有している不動産を手放す人や、働き方改革などでライフスタイルに応じて住む場所を変えるという人も増えたため、不動産売買が一生に一度のものではなくなりつつあります。

「住宅ローンの返済が滞ってしまった」「自宅を売る気はなかったけれども、冠婚葬祭や健康状態などによってまとまった資金が必要になった」という場合も不動産の売却を検討されるのではないでしょうか。

不動産の売却を検討しているからといって、住宅ローンを滞納したまま何もせずにそのまま放置してしまうと、裁判所から競売の通知が届いてしまいます。

ではなぜ裁判所から通知が届くのでしょうか。それは多くの不動産には「抵当権」がついているからです。

この記事では不動産を売る前に知っておくべき抵当権についてご説明します。

抵当権とは

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民法には「抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する」と記されています。

難しく聞こえるかもしれませんが、簡単に言い換えると「指定の不動産を担保にお金を貸し、返せなくなったときは担保にした不動産を売って債務の返済にあてさせてもらいます」という権利のことです。

一般的には債務者が住宅の購入・建設・改良などで金融機関から融資を受ける際に、当事者間の合意の上で設定されています。

また一つの物件に対して複数の抵当権が設定されることがあり、これを抵当権の順位といいます。記事の後半で具体例を挙げて詳しく説明しますが、抵当権の順位の高い権利者から順に債務が返済されるという仕組みで成り立っています。

住宅ローンを完済することで抵当権の抹消をする手続きが可能となりますが、住宅ローンの返済ができなくなり滞納してしまった場合はどうなるのでしょうか。

そうなるとはじめに述べたように、抵当権の権利者によって競売の申し立てがなされ、裁判所から競売の通知がくるということになります。

競売とは

抵当権 競売

競売(けいばい)という言葉は法律用語です。初めて耳にするという方もいるかもしれませんので、次は競売について簡単にご説明します。

競売はローンの返済が滞った場合に、債権者が一定の条件のもとで手続きを申し立て、裁判所を通して債務者の不動産を売却してその代金を弁済にあてることです。

順調に返済ができていれば問題はありませんが、もし住宅ローンの不払いが発生し一定期間滞納状態が続くと、債権者は債務者に対して督促をします。

その督促に対し弁済をせずにいて抵当権の権利を行使されると、指定の不動産が差し押さえられ、裁判所の執行によって強制的に売却をされてしまうのです。

競売によって不動産が売却され、所有権が買主に移されると、住み慣れた住宅であっても速やかに引き渡しを行わなければなりません。

新しい住居を探すのは時間やお金がかかるうえ、競売による不動産の売却は総じて一般の市場価格よりも値が下がるので、債務が多く残ってしまうことがあります。

抵当権のついた不動産が競売にかけられると

抵当権 競売

抵当権のついた不動産が競売にかけられた場合はどうなるのでしょうか。

具体例をあげて説明していきましょう。

例えば会社員のAさんが、銀行Bに2,500万円の融資を受けてマイホームを建てたとします。

数年間は順調にローンの返済ができていましたが、転職による収入の減少により徐々にこれまで支払っていた返済額の捻出が困難になってしまいました。

日々の生活費や子どもの教育費などを削るわけにもいかず、返済のめどがたたないまま数ヶ月が過ぎ、抵当権が行使されたことでついに裁判所から競売の開始通知が届いてしまいます。

担保となる不動産の市場価値は3,000万円でしたが、その後の競売による落札額は2,500万円でした。

このように競売の価格は市場相場よりも低く設定されてしまうため、落札額がローンの残債を上回ることは極めて稀です。

ここで抵当権の順位の話に戻ります。

Aさんの銀行Bに対する債務額が2,500万円で、抵当権の第一順位を銀行Bが持っていた場合、銀行Bは優先的に自己の貸付額である2,500万円を回収することができます。

Aさんの債務額が2,500万円だけであれば残債は残りません。

しかし、仮にローンの返済中に増築をして、その際に信用金庫Cに住宅を担保にした200万円の融資を受けていたとします。

その場合、抵当権の第一順位を持つ銀行Bが債務の回収を完了するまで、信用金庫Cは抵当権の二番順位の権利者ということになります。

抵当権の一番順位者への債務額よりも高く売却ができた場合に、残った資金を抵当権の二番順位者への返済にあてることになりますが、Aさんの場合は一番順位者への返済で資金が無くなってしまうので、信用金庫Cは債務の回収をすることができません。

このように「順位の高い権利者から順に配当を受けることができる」というのが抵当権の順位の仕組みです。

抵当権の確認方法

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不動産に抵当権が付いているかは、不動産登記情報で確認すればわかります。

管轄は法務局にあり、手数料は有料ですが、申請すれば誰でも確認することが可能です。

抵当権の情報以外にも債権の発生日、原因、債権額、利息、債権者、債務者など不動産のあらゆる情報が記載されていて、順位の変更などが発生した場合は新たに変更の登記がなされますが、その制度や手続きは法令によって明確に定められています。

こうした登記の手続きは金融機関や法律の専門家が行うことがほとんどですので、ご自身の所有している物件の抵当権についてしっかり理解していない方がいることもよくあります。

ローンを完済しても抵当権が自然になくなるわけではありません。

不動産についた抵当権の抹消手続きは、ご自身で行うか専門家に委託する必要がありますので、やはり基礎知識として知っておいた方がよいといえるでしょう。

抵当権つきの不動産を売却する方法

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競売の他に抵当権が設定された不動産の売却ができるのか気になった方もいるのではないでしょうか。

結論から申し上げると、売却は可能です。

抵当権のついた不動産を売却する場合は抵当権の権利者(債権者)の承諾が必要ですが、ローンの返済の保証があれば債権者にとってもメリットがあるといえます。

抵当権がついている不動産であることはどんな売却方法でも必ず購入者に示されるため、負債額によっては物件の価値が左右されることもありますが、それでも競売ほど市場価格より価値が低下することは少ないでしょう。

競売の開始通知を受けてからでも売却が完了する前であれば、交渉によって売却を選択することもできるので、一日でも早く専門家に相談することが大切です。

任意売却という方法

売却方法の一例として「任意売却」という方法があります。

自らの意思で売却を決めて、不動産業者などを通して相場に近い価格で売りに出すことができるため、競売の場合よりも売却後に残る債務が少なくなる可能性があります。

住宅を手放すことにはなりますが、売却後は管理費や修繕費や固定資産税などの支払いが不要になるというのは大きなメリットです。

しかし、築年数が古いとリフォームやリノベーション工事を前提に購入をするような場合もありますので、業者によっては価格を低く見積もられてしまう可能性もあります。

リースバックという方法

「リースバック」という方法であれば、住宅を売却した後に買主と賃借契約を結び、これまでのように住宅に住み続けることができます。

家賃の支払いが必要にはなりますが、新たな住居を探して引っ越しをする必要がないので支出を抑えることができ、従来の月々のローンよりも低い賃料で契約が成立すれば、結果として負担が軽くなる可能性もあります。

また、条件次第では将来物件を買い戻すこともできるかもしれません。

売却方法や買い手の不動産業者によっては、物件の査定価格には大きな差が生じるため、複数の選択肢を比較して資産価値を慎重に見極めることが重要です。

まとめ

この記事では抵当権の基礎についてご紹介しました。

住宅ローンの返済が滞ってしまったり債務を減らしたいと考えている方や、反対に不動産の購入を検討されている方にとっても、知っておくべき不動産の基礎知識のうちのひとつとして重要なキーワードだったのではないでしょうか。

抵当権はよく理解して活用すれば、より多くの融資を受けることができるとても優れた仕組みです。

すでに住宅ローンの融資を受けている方のなかで返済に不安のある方は、お持ちの不動産の抵当権の情報をしっかり確認するようにしましょう。

そして、不動産の売却を検討する際は、競売を執行される前に一番納得のいく不動産の売却方法を時間をかけてしっかり見つけるようにしましょう。

その後の住まいをどのように確保するのかということや、家賃や生活費などの将来必要になる資金をしっかりシミュレーションしたうえで判断する必要があります。

自分で手続きを行うことに不安がある方は、悩みを抱え込まずに早めに専門家に相談することもおすすめします。

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