競売による売却と不動産登記を徹底解説!
競売による不動産売却は、強制的に債権回収をはかる手段として用いられることが多く、不動産が差し押さえられることによって手続きが進んでいくものです。
競売を債権者から申し立てられるのは、前振りなどなく突然やってくることがほとんどです。競売にかけられてしまった場合、どのようにしたらいいのか、どのような流れで進んでいくのかなど不安要素が多くあります。
加えて、不動産売却において財産を守ることに繋がる不動産登記はとても重要です。しかし、不動産登記は日常生活の中で携わることがなく、詳細や意味などを理解している人はほとんどいないのが現状です。
そのため、この記事では競売による売却についての流れと不動産登記についての内容や種類などを徹底解説していきます。
競売による売却とは
競売による売却とは、担保権者や債権者の申し立てによって不動産が強制的に売却されるということです。ローンを長期的に滞納していると、借入先の金融機関が抵当権に基づいて裁判所に申立てを行い、不動産を競売にかけるという流れです。
競売による売却の流れ
ここからは競売による不動産売却の流れを解説していきます。
競売申立て
ローンを滞納された金融機関が競売の申立てを行います。その後、裁判所から債務者の元へ競売開始通知が届きます。
現況調査
金融機関による競売の申立てが行われた競売開始決定から1〜3ヶ月後の期間は、裁判所の執行官が物件を訪れて現状を確認するという現況調査が行われます。
情報公開
現況調査が行われてから2〜3ヶ月後に入札期日や開札期日が指定されます。物件情報が公開され、裁判所やWEBなどで閲覧可能な状態になり、情報が公開されていきます。
入札
入札期日になると、情報公開を元に物件の購入を希望する人が入札を行います。入札期間は平均して1週間程度です。
開札
入札期間を経て、開札日になると入札金額の確認を行い、一番高い金額で入札した人に落札の権利が与えられることになります。
引き渡しと登記
裁判所にて物件の売却許可決定が出た後の1ヶ月半の期間に落札者が競売代金を納付します。競売代金納付後に物件が落札者に引き渡され、登記が完了します。
不動産登記とは
まず、登記とは権利などについて公けに明らかにするための制度です。つまり、不動産登記とは、土地や建物が誰のものなのかをはっきりするために行うものです。一つの不動産に対して一つの登記簿が作成されます。
不動産登記を行うことで、法務局が管理する帳簿にはどこにあり、所有者が誰などの情報が記録されます。
不動産登記の種類
不動産登記簿の内容は以下の3つに分かれています。
- 表題部
- 権利部(甲区)
- 権利部(乙区)
以上の3つの内容の見方を解説していきます。
表題部
表題部には土地や建物に関する情報が記載されていて、どこにどのような不動産があるのかがわかります。
権利部(甲区)
権利部(甲区)には所有権に関する、所有者の住所や氏名、不動産を取得した日付などが記載されています。つまり、権利部(甲区)を見ることで不動産を手に入れるまでの経緯をある程度までであれば知ることができます。
また、ローンの支払いの滞納などにより差押えを受けた場合は、その内容が権利部(甲区)に記載されます。
権利部(乙部)
権利部(乙部)には抵当権や地上権、地役権などの所有権以外の権利に関する内容が記載されています。不動産を購入した際の利用制限などについての権利を確認することができます。
不動産売却時の登記に必要なもの
不動産売却時の登記に必要なものは、登記の内容によって異なりますが、ほとんどの場合には登記申請書の他に記載した内容を証明する書類が必要です。
ここでは、多くの方に関係する可能性の高い、建物表題登記と所有権保存登記、所有権移転登記に必要なものを解説していきます。
建物表題登記
建物表題登記に必要な書類などは下記となります。
- 登記名義人の住民票(世帯全員・全て記載されたもの)
- 建築確認済証
- 検査済証または工事完了引渡し証明書
- 印鑑証明書
- 本人確認書類のコピー
- 委任状
登記名義人の住民票の住所は新居の住所を記載するということに注意が必要です。
所有権保存登記
所有権保存登記に必要な書類などは下記となります。
- 建物の所有者全員の住民票
- 住宅用家屋証明書
- 委任状
所有権移転登記(売買の場合)
所有権移転登記(売買の場合)に必要な書類などは下記となります。
- 契約書
- 権利書、登記識別情報通知書
- 不動産を護る人の印鑑証明書
- 固定資産評価証明書
- 委任状
登記費用
登記をする場合、登録免許税と司法書士などの専門家に依頼する場合の手数料がかかります。
登記免許税は登記の内容によって違いますが、基本的には<課税標準×税率>で求めることができます。
多くの方に関係する可能性の高い、建物表題登記と所有権移転登記の費用について解説していきます。
建物表題登記
建物表題登記の費用は以下の通りです。
内容 | 課税標準 | 税率 |
所有権の保存 | 不動産価額 | 0.4% |
競売による所有権移転 | 不動産価額 | 2% |
相続による所有権移転 | 不動産価額 | 0.4% |
所有権移転登記
所有権移転の費用は以下の通りです。
内容 | 課税標準 | 税率 |
売買 | 不動産の価額 | 2% |
相続 | 不動産の価額 | 0.4% |
その他(贈与など) | 不動産の価額 | 2% |
上記のように、登記免許税は基準が決められているため、変化することはありません。
しかし、司法書士などの専門家に依頼する場合に発生する手数料は、専門家ごとに決めることができるため、価格に変動や違いがあります。
専門家に依頼する場合は、事前に見積りを入手し、他の専門家と比較することをおすすめします。加えて、コストを抑えて進めたい場合は、自身で手続きを進めていくことを選択肢に入れるのもおすすめです。
自身で登記する場合の手順と注意点
ここからは自身で登記手続きを進める場合の手順と注意点を解説していきます。
自身で登記手続きを行う場合、まずは新たな所有者との利害関係が生まれる可能性や、自身で登記手続きを行うことを新たな所有者に承諾してもらえない可能性があることを理解しておく必要があります。
自身で登記手続きを行う際は、新たな所有者との間にしっかりと信頼関係がある場合がおすすめです。
法務局の相談窓口でやるべきことを確認
まずは法務局の相談窓口に電話をし、登記の理由を説明します。その際に、必要書類や直接法務局に行って相談する場合の日時を確認しておくことがおすすめです。
申請書の入手
続いて、申請書の様式を入手していきます。不動産登記の申請書の様式と記入例は、登記の種類や理由別で法務局のサイトからダウンロードすることができます。
必要書類作成
最初に法務局の相談窓口で相談をした際に確認をした必要書類を揃えていきます。
印鑑証明書や住民票の写し、戸籍謄本などはそれぞれ交付手数料がかかります。金額は自治体などにより違いますが、1通につき約300〜750円です。必要な数によって異なりますが、通常は必要書類を集める場合の合計金額は5000円くらいになることがほとんどです。
また、印鑑証明書や住民票の写しなど、自身で手配することができないものや代理で手配するのに委任状が必要なものがあります。事前に確認をし、漏れのないよう注意が必要です。
申請書類の提出
添付書類も合わせて、必要な申請書類を揃えることができたら、揃えることができた書類を法務局に提出をします。
法務局が申請書類を受理すると、内容の審査をします。内容の審査の結果、修正箇所や書類の不足などがあった場合は、連絡がくるので、迅速に指摘に応じることが必要です。
登録完了証と登記識別情報通知書の受け取り
法務局の審査が通り、登記が完了すると、登記完了が記された登記完了証と、所有権が移転した後の登記識別情報通知書が交付されます。
登録完了書と登記識別情報通知書を窓口で直接受け取る場合は、申請書に使用したものと同じ印鑑と運転免許証などの身分証明書を持参する必要があります。その場合、事前に窓口に電話をして、登記が完了しているか確認をしてからいくとスムーズに受け取ることができます。
窓口で受け取らず、郵送にて受け取ることも可能です。その場合は、申請書の提出時に返信料金分の切手を貼った返信封筒を同封しておく必要があります。
登記完了書と登記識別情報通知書の受け取りの際に、全部事項証明書を交付してもらうことがおすすめです。手数料として通常600円がかかりますが、全ての登記手順が間違いなく実施されているか確実に確認することができます。
まとめ
競売による売却と不動産登記について解説してきましたが参考になりましたでしょうか?
不動産登記については専門的な知識が多く必要であるため、専門家に任せることが安心ではあります。しかし、必要なものや費用について知っておくことで資金計画を立てることができるようになります。
意外と大きな出費になる可能性もありますので、どのような手続きが必要でどれくらい費用がかかるのか把握しておくことは大切です。