リースバックでも生活保護は受給できる?問題点とその解決方法を紹介
誰にも迷惑をかけずに日々を真面目に暮らしていても、人生には思いもよらない病気やケガ、不景気によるリストラなど、さまざまな理由で収入が途絶え、生活に困窮するような最悪の事態に陥ってしまうことがあります。
その行き詰まった生活を救うひとつの方法として、国の扶助制度である生活保護がありますが、自動車や持ち家などの資産を所有している場合、申請しても対象外として断られてしまいます。
しかし、リースバックを上手く利用すれば、持ち家に居住しながら生活保護を受けることが可能であることをご存じですか?
ここでは、生活保護を申請するためにどのようにしてリースバックを利用するのか、問題点となるところとその解決方法をご紹介します。
リースバックとは
リースバックとは、持ち家を売却しての資金調達や、住宅ローンの軽減を目的として利用することができる仕組みです。
売却金の用途は特に制限がなく、売却した持ち家の買主と賃貸借契約を結ぶことで、売却後も借家として住み続けることが可能で、後々買い戻すこともできるため、思い入れのある持ち家から引っ越さずに済みます。
最近になって、さまざまな理由で住宅ローンに困窮している方や資金が必要になっている方のリースバックの利用が増えてきています。
生活保護とリースバック
生活保護は、不動産などの資産を持っていると申請できないという条件があります。
子供の学区を変えたくないという方や、そもそも引っ越しする資金がない方などは、その条件を満たせずに申請を諦めてしまうしかないのでしょうか?
ここで、実際の生活保護の受給条件がどのようなものなのか、そして生活保護とリースバックの関係性を詳しく見てみます。
生活保護の受給条件
以下が一般的に言われている生活保護の受給条件です。
収入が、居住地で定める最低生活費以下であること
最低生活費の額は、住んでいる場所によって時給や物価が違うのと同様、自治体によって変わりますが、大体13万円前後というところです。
働いていても、その最低生活費の水準に届いていなければ、差額分を生活保護として申請することが可能です。
預貯金や不動産などの資産がなく、換金できるものなども持っていないこと
生活保護を申請すると、ケースワーカー(相談員)に調査されますが、その際、持ち家は勿論、自動車や預貯金、株券や貯蓄性のある生命保険、2台以上のパソコンや携帯電話、貴金属など、生活する上で無くても支障のない、いわゆる資産と呼ばれるもの、換金性のあるものや売却できるものは売却を、クレジットカードなどは解約を勧められます。
援助可能な親族がいない、または援助額が最低生活費に及ばない
生活保護を申請すると、配偶者から3親等までの身内に対して、福祉事務所から扶養調査書が郵送されてきて、援助の意思の有無を確認されます。
生計を共にし、扶養するなどして生活を援助してくれる親族等がいない場合は、生活保護の受給要件を満たします。
援助があっても最低限の生活をするには援助額が最低生活費の水準に満たない場合も、差額分が生活保護の対象になります。
病気やケガ、障がいなどの理由で働けない
病気やケガ、障がいなどが理由で仕事に就けないことは、生活が困窮する一番の原因になります。
生活保護申請の際は、医師の診断書や障害者手帳などで働くことができない旨を証明する必要があります。
しかし生活保護は生活に困窮している方が対象であり、診断書の発行には割高な費用が必要ですので、体調が綴られている日記や診察を受けた病院の領収書などで代用できる場合もあります。
他に受けられる扶助制度等を全て利用している
国の扶助制度は生活保護だけではありません。
社会保険の制度である傷病手当金、労災保険や失業保険、年金などの身近な制度から、求職者支援資金や母子父子寡婦福祉資金、生活福祉資金などの貸付制度などもあります。
住宅ローンや自動車ローンなどの借金がある
借金があると生活保護の申請が通らない可能性があります。
生活保護の制度は国民の税金で成り立っているので、基本的には受給した生活保護費を借金の返済に充てることができないことになっているからです。
奨学金などの公的な貸付はその限りではありませんが、住宅ローンなどの借金を完済することが難しい場合、自己破産などを選択するケースも少なくありません。
リースバック利用時の問題点
生活保護の受給要件を見ると、リースバックを利用した場合に問題となるポイントが4つあることが分かります。
持ち家は資産になりますし、売却すれば収入や預貯金となります。住宅ローンが残っていれば借金ですし、リースバック時の高い家賃は生活保護受給時の賃料の上限に引っかかります。
それぞれの問題点を並べてみると、リースバックと生活保護は同時に利用することが一見不可能に見えます。
リースバックと生活保護を両立する解決方法
それでは、リースバックを利用しつつ生活保護を受給する解決方法を、ひとつずつ解説します。
リースバック時の賃料の高さは買主(貸主)と相談
生活保護を受給する場合の賃料は、市町村ごとに上限が決まっていますが、リースバック利用時の賃料は高めなので、上限を超えるようなことがあると、原則引っ越しするよう指導を受けてしまいます。
実はリースバックの場合、売却価格が高ければ賃料も高くなり、抑えれば賃料もそれなりに抑えられます。
物件が高く売却できればそれは確かに助かりますが、目的が生活保護であれば、買主(貸主)と相談して、扶助基準範囲内に収まるよう売却価格を抑えられるか相談しましょう。
財産(収入)として見られる売却金は、ローン残債に充てるか生活保護受給前に利用する
リースバック時の売却金はまとまった資金となってしまいますが、生活保護は資産があると受給できません。
そして売却したとしても住宅ローンが残っている場合も、借金があることになりますので生活保護の対象外です。
しかし、残債に対して売却金を充てて残らなかった場合は資産がない状態となり、借金も解消されるので問題ありません。
もし売却金がローン残債を上回っていて資金が手元に残ってしまった場合でも、当面は残った資金で生活をし、底をついた時点で改めて生活保護を選択肢に入れるとよいでしょう。
ただしその場合、賃料を生活保護の受給条件の上限に達しない程度に、あらかじめ抑えておかなければなりません。
持ち家を売却してもローンが残る場合は任意売却
オーバーローンといい、売却価格よりも住宅ローン残債が上回る場合は、基本的にはその持ち家を売却することはできません。
その場合は、住宅ローンを借りている金融機関の許可を得て持ち家を売却できる任意売却という方法がありますが、借金が残るので生活保護の対象外となってしまいます。
任意売却は通常の不動産売買とは違い、仲介業者を自分で探し、売買活動に協力しなければいけませんが、交渉が可能な投資家などの買主を見つけられた場合、相談次第では生活保護を申請できるよう相談にのってくれる可能性があります。
任意売却を選択した場合は、その仲介業者選びが肝と言えます。
住宅ローンを借りている金融機関も、ローン支払いが滞り競売にかけられて低価格で売却されてしまうよりはまだ少しでも回収できるので、任意売却を承諾してくれる可能性は低くありません。
それでも残債が残ってしまい、払うあてもない場合は、自己破産も視野に入れておくべきかもしれませんが、借金がなくなることで生活保護の受給要件には当てはまることになります。
生活保護を申請する前にできることもある
扶助制度は生活保護の他にも、上述した通り、年金や社会保険の給付など多岐にわたるので、福祉事務所や関係各所に相談してみると、生活保護を申請する前に、受けられる援助について聞けるかもしれません。
また、以下の厚生労働省のサイトにもありますが、持ち家や自動車などの資産があっても生活保護を受給できるケースもあるので、まずは確認してみましょう。
まとめ
リースバックで生活保護は受給できるのか、受給要件と合わせて問題点や解決方法を詳しく解説してみましたが、いかがでしたか?
売却価格のコントロールが可能な特性を活かし、家賃や買戻し価格を調整することができるリースバックは、意外にも生活保護と両立しやすい仕組みだということが分かりました。
引っ越し費用を捻出する必要もなく、変わらず住み続けられるので生活保護を受けていることも隣近所に知られる恐れがありません。
勿論、全くデメリットがないわけではなく、実際はさまざまな点を不都合に感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、なんといっても、慣れ親しんだ家と共に、苦しい生活の立て直しをすることができるのです。
この記事が、持ち家を引っ越すことなく生活保護を受給できないかとお悩みの方のご参考になれば幸いです。