リースバックのために自宅の所有権移転を行う方法とは?必要書類を解説
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皆さんはリースバックという資金調達手段をご存じですか?元々は企業の資金調達手段として広く利用されていた比較的古くからある手法ですが、近年では個人の方をも対象として利用されるようになり、これに伴ってリースバックサービスを提供する専門業者も随分と多くなりました。
具体的には、リースバックでは自宅の売買と同時に、賃貸借契約を行うことで、自宅を手放す(売却する)とともに資金を獲得し、その後も自宅を賃貸物件として賃借することのできるシステムとなっています。
そして、この一連の手続きでは売買が行われているため、自宅の所有権を移転させる手続きを行わなければなりません。
今回の記事ではそんな所有権の移転手続き(所有権移転登記)を進めるために必要な書類や、手続きの流れに関してご説明していこうと思います。ぜひ最後までご覧ください。
所有権移転登記とは?
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所有権移転登記とは、土地や建物の所有権が売買や相続、贈与などによって移ったという事実を法的に明確化するために行う登記のことを表しています。このそもそもの”登記”というのは、土地や建物の所在や権利関係などを国で管理するために帳簿に記載してもらう一連の手続きであると認識してもらえればと思います。
この登記を行うことによって対象物の所有を主張することができるようになる(法律上)ため、たとえば、売買行為等を通じて対象物を獲得したとしても、所有権移転登記を行って登記を備えなければ、第三者に対して所有権の移転を主張できない(※)ことが民法177条に定められています。
法律上では対象物の所有を主張するためには所有権移転登記を行わなければならないということになりますが、また一方で、この行為そのものを行うことが義務付けられているわけではないため、適切な権利の移転等を行うことができずトラブルケースに陥ってしまう方もいらっしゃいます。
※売買行為によって売主が買主から建物を購入するとともに、買主が他者(第三者)にも同建物を販売していたとした場合、たとえ売主が売買手続きを行ったのが第三者よりも早かったとしても、最終的な建物の所有権は同建物の所有権移転登記を先に行ったものに帰属するようになっているため、売主が第三者に対して建物の所有を主張するためには所有権の移転登記が行われている必要があるということを意味しています。
所有権移転登記が必要なケースとは?
所有権移転登記の概要をご理解いただいたところで、お次にそのような手続きをどのような場面で行わないといけないのかを考えていきましょう。それぞれのケースにおける所有権移転登記を怠った場合のトラブル等にも言及していますのでご確認ください。
所有権移転登記を行う必要が出てくるケースは以下の3つになります。
- 売買:所有不動産を売却した場合、または不動産を購入した場合
- 贈与:親族などから不動産を贈与された場合
- 相続:親族の死去などに伴って不動産を相続した場合
- 財産分与:離婚等で不動産を分与する場合
それぞれのケースに関して詳しく見ていきましょう。
売買:所有不動産を売却した場合、または不動産を購入した場合
不動産の売買が行われると、当然のことですが、不動産の所有者は売主から買主へと変化します(所有権も売主から買主へと移行する必要が出てきます)。
多くの売買取引のケースにおいて、売主と買主は不動産仲介会社を経由して取引を進めることとなるため、案外、両者がお互いに信用に足る相手であるかを確認することが難しいです。
そのため、売主にとっては売却(購入)に伴う買主からの支払いが完了しないままに所有権移転登記が行われてしまうのではないかという懸念が、買主にとっては購入に伴う支払いを行っているものの必ず所有権の移転が行われるのかという懸念が残ってしまいます。
上記の不安はもちろん、売主・買主の一方が悪質な相手であった場合にはトラブルに進行してしまうこともあります。そのため、そのようなトラブルの発生を防止するために、不動産売買では司法書士が代理で所有権移転登記を行うことがオーソドックスな手続きとなっています。司法書士は、売主・買主の引き渡しの場に立ち会うとともに、当時者本人同士の間で取引が適切に完了されたか否かを見届けた後に、売主・買主の委託を受ける形で管轄の法務局で移転登記の手続きを行っています。
なお、リースバックは売買契約と賃貸借契約を一体化して行っている手続きであるため、この一連の手続きのうちの売買契約を締結する・遂行するにあたって、所有権移転登記を行う必要が出てくるのです。
贈与:親族などから不動産を贈与された場合
親から子へ、というように贈与もまた所有者の変更が生じるため、所有権移転登記手続きが必要となるケースのひとつだといえます。
親族間での贈与の際に所有権移転登記手続きを怠ってしまったとなると、贈与者が無くなった際に他の相続人(ご兄弟など)にも相続の権利が発生してしまい、所有を巡ってのトラブルが起こることがあります。
また、名義は贈与者のままになっているため、たとえ贈与されていたとしても容易に売却等を行うことができず、この名義を変更するためには相続人すべての同意が必要になるというようにトラブルを招きやすくなってしまいます。
相続:親族の死去などに伴って不動産を相続した場合
相続とは贈与と異なり、親族等の死去に伴って残された遺産(不動産等)を引き継ぐために行うものであり、これまでと同様に所有者の変更があるため、所有権移転登記手続きが必要となるケースであるといえます。
相続のケースにおける所有権移転登記手続きの未遂行は、相続人が亡くなってしまってからトラブルを招くことがあり、相続人にお子さんがいた場合に、その子ども達すべてにも相続の権利が発生するようになるため、権利関係が複雑化してしまう可能性を孕んでいます。
財産分与:離婚等で不動産を分与する場合
財産分与とは結婚等によって夫婦共同で築いた資産を夫婦関係の解除に伴って分配する手続きのことであり、共同で築いてきた資産の所有を元夫婦のどちらに帰属させるかを明確化させるために所有権移転登記手続きを行う必要が出てきます。
財産分与に起因するトラブルとしては、資産の引き継ぎで所有者となった物と、資産の法律上の所有者が一致していない場合によるトラブルが挙げられ、所有権移転登記手続きが行われないことで所有している資産をいつまでも自由に扱うことができないということがあります。
また、離婚は円満なケースで行われるとは限らず、離婚が成立した後に所有権移転登記手続きを両者ともに協力的に行うとも限らないためトラブルに発展しやすいといわれています。
所有権移転登記に必要な書類
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所有権移転登記を行うためには登記申請書を作成して法務局への提出するというステップが必要となりますが、この登記申請書と一緒に添付して提出しなければならない書類が複数あり、自身で手続きを進める場合にはすべてご自身で用意する必要がありますし、司法書士に委任するにしてもご自身でなければ入手できない書類もあります。
ここでは、所有権移転登記を売買契約の一環として行う場合にどのような書類が必要になるのかを以下から説明していこうと思います。
司法書士への委任状(司法書士へ委任する場合)
司法書士を代理人として所有権移転登記を行ってもらう場合に必要となる書類です。委任状そのものは司法書士が用意してくれると思いますので、売買取引においては売主と買主の両者が署名・捺印をすることで委任手続きを進められるようになります。
身分証明書
司法書士に代理で登記してもらう場合であっても、ご自身で登記の手続きを進めるにしても、売買取引に関係のある当事者(本人)であるかを確認するために、書類発行等のさまざまな場面で提示を求められることになるかと思います。
運転免許証やマイナンバーカードなど顔写真もきちんとついている証明書が望ましいといえます。
印鑑証明書および実印
各種の書類等に捺印をする場面が出てくるかと思いますが、その際に用いた印鑑が法的に適切なものであるかを証明するために、捺印の際には実印を用いるとともに印鑑証明書を添付する必要があります。
印鑑証明書の発行は市役所や町役場で行うことができますし、自治体によってはマイナンバーカードを用いてコンビニ発行できる場合もあります。
登記済権利証または登記識別情報
所有権移転登記前の不動産の所有者を法務局に示すために必要な書類であり、前登記名義人が所有しているものであるため、売買契約においては不動産のもとの所有者、つまりは売主が用意する必要があります。
2005年の3月以降から登記済権利証が12桁の符号から構成される登記識別情報に変更となっていますので、ご自身(売主)が登記を行ったのがいつであるのかを確認し、きちんと用意するようにしましょう。
固定資産評価証明書
所有権移転登記を行う際、登録免許税という税金が掛かります。この税金の金額は不動産の固定資産評価額によって変動するものであるため、その税金を算出するにあたっての根拠として用いることになる書類が固定資産評価証明書です。
基本的には売買の対象となっている不動産の所在地を管轄している市役所・町役場等で入手することができます。
住民票の写し
売主・買主ともに現住所を示すために住民票の写しが必要となります。住民票は、現住所を管轄している市役所・町役場等で発行してもらうことができるだけでなく、マイナンバーカードを用いたコンビニ発行を可能としている自治体もあるため事前に確認してもらえればと思います。
売買契約書
不動産の登記を申請する際には、その登記がどのような理由で行わなければいけないかを証明するための書類(登記原因証明情報)が必要となります。売買の場合には、売買契約書が登記原因証明情報として機能するため、こちらの用意も必要となりますが、基本的に売主と買主の間を仲介している不動産会社が双方の意図を汲んで用意するため、当事者が作成するということはありません。
まとめ
リースバックでは売買契約を手続きのひとつのステップとして行う必要があるため、これに伴って所有権移転登記手続きを行わなければなりません。そして、所有権移転登記手続きを申請するにあたっての必要書類に関してご説明してきましたが、いかがだったでしょうか?
今回の記事を通じて、リースバック手続きをスムーズに進められたらと思いますし、司法書士の方に手続きを代行してもらうのか、ご自身で進めていくのかを判断するためのひとつの材料として機能してもらえたら嬉しく思います。
リースバックでは売買契約に伴う所有権移転登記手続きもありますが、この他にも売買契約等も行う必要もあり、すべての取引の中できちんと抑えておくべきポイントが存在します。マイホームまもり隊では、リースバックに関するその他のコラムもたくさんご用意していますので、ぜひお時間の許す際にご覧になってみてください。