不動産の相続登記に必要書類と手続きの進め方を解説
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不動産の所有者が亡くなり、その不動産を相続する人が元の所有者から自分へ名義変更をすることを「相続登記」といいます。
この相続登記を面倒だからといって放置しておくと、不動産を売却したい時に余計な手間と費用が発生したり、相続人同士の揉め事に発展したりと、さまざまなトラブルを招く恐れがあります。
そのようなトラブルを回避するために、不動産の相続が発生したらできるだけ早い時期に相続登記を行い、所有者を明らかにしておくことをおすすめします。
それでは、相続登記に必要な手続きと書類にはどのようなものがあるのでしょうか。この記事では、不動産の相続登記の必要性を踏まえ、解説していきます。
不動産の相続登記の必要性
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「相続登記」は法律上の義務ではなく、登記を放置しておいても罰せられるわけではありません。しかし、本来の所有者に名義変更をしておくことで、下記のようなさまざまな不都合を回避することができます。
- 不動産を売却・贈与できない
- 不動産を担保に金融機関から融資を受けることができない
- 相続が難航してしまう恐れがある
- 不動産の差し押さえをされてしまう可能性がある
それぞれの詳細を解説していきます。
不動産を売却・贈与できない
不動産の名義変更をしていない場合、第三者へ売却・贈与はできません。
不動産を担保に金融機関から融資を受けることができない
融資を受ける本人名義の不動産の担保が原則となるので、金融機関からの融資を受けることができません。
相続が難航してしまう恐れがある
相続人の一人が死去し次の相続が発生した場合など、対象不動産の相続人が増えることよって、協議が難しくなる恐れがあります。相続人が増えていくことにより、相続登記に必要な戸籍等の書類も増えていくので手続きも煩雑化してしまいます。
不動産の差し押さえをされてしまう可能性がある
相続人の誰かが借金やローンといった負債を抱えていた場合、債権者は債務者(相続人)の不動産の法定相続分を差し押さえることが可能です。
相続登記がされていなければ、債務者に他の相続人が所有権を主張することができないため、もし第三者に売却されてしまうと、その第三者と不動産を共有することになってしまい、所有者の関係性が複雑化してしまいます。
不動産相続登記の進め方
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では相続登記はどのように行えばよいのでしょうか。
全体の流れは、次のとおりです。
- 3つの相続パターンの確認
- 必要書類を揃える
- 法務局へ申請
それでは、順に内容を見ていきましょう。
3つの相続パターンの確認
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どのように不動産を相続したかで、相続登記の進め方や必要書類が異なってくるので注意が必要です。相続登記には、主に下記の3つのパターンがあります。
- 遺言による相続登記
- 遺産分割による相続登記
- 法定相続分による相続登記
まず上記のどのパターンが自分に該当するのか、確認しましょう。
遺言による相続登記
亡くなった方が遺言書を残している場合、その遺言書をもとに行う相続登記です。相続人は単独でその不動産の相続登記が可能です。
遺産分割による相続登記
相続人が複数人いる場合、相続人全員で遺産分割の協議を行い、その協議で決められた割合で行う相続登記です。その際は、遺産分割協議書の作成が必要となります。
相続登記の大半はこの遺産分割によるもので、法定相続分とは異なる持分で名義変更を行いたい場合は、この相続登記を選択します。
法定相続分による相続登記
民法で定められた相続分で不動産を相続する場合に行う相続登記です。相続人が複数いる場合、法定相続通りに相続してしまうと、その不動産を相続人全員で「共有所有」することとなり、相続登記も共有で行うことになります。
不動産を「共有所有」するということは、将来その不動産を賃貸・売却する際に共有者全員の同意を得なければならないということを意味します。その際に話がまとまらず揉め事に発展し、不動産の処分が煩雑化するという懸念があることから、共有で複数人の相続人の登記をする場合には注意が必要です。
必要書類を揃える
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相続パターンが確定したら、各々に必要な書類の準備をしましょう。
どのパターンでも必要な書類
下記の6つの書類は、どの相続パターンでも不動産の相続登記の際に必要となります。
- 登記申請書
- 登記事項証明書(登記簿謄本)
- 固定資産評価証明書(相続登記を行う年度のもの)
- 被相続人(亡くなった人)の住民票除票または戸籍除附票
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の住民票(印鑑登録証明書及び戸籍附票でも可)
それぞれ確認していきましょう。
登記申請書
法務局の窓口またはホームページで取得することができます。ホームページに様式と記載例が掲載されています。(http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/minji79.html)
登記事項証明書(登記簿謄本)
対象不動産の所有者の確認を行うために必要です。全国どこの法務局でも取得できます。
固定資産評価証明書(相続登記を行う年度のもの)
登録免許税額の算出のために必要です。対象不動産が存在する市区町村役場で取得します。
被相続人(亡くなった人)の住民票除票または戸籍除附票
被相続人は死亡届が市区町村役場で受理された後、住民票から除外されます。死亡が確認されたことの証明に住民票の除票が必要となります。相続人であれば、被相続人の最終住所の市区町村役場で取得することができます。
戸籍の除附票は、被相続人の最終本籍地の市区町村役場で取得します。
相続人全員の戸籍謄本
相続人の本籍地を管轄する市区町村役場で取得します。最終本籍地の戸籍謄本のみで問題ありません。
相続人全員の住民票(印鑑登録証明書及び戸籍附票でも可)
対象不動産を相続する相続人の住民票が必要です。相続人の住民票がある市区町村役場で取得できます。
追加で必要な書類
遺言による相続の場合は下記の書類が追加で必要となります。
- 遺言書
- 被相続人の死亡記載のある戸籍謄本
遺言書
自筆証明遺言または秘密証書遺言の場合は検認済みであることが必要です。公正証書遺言の場合は検認は不要です。
被相続人の死亡記載のある戸籍謄本
被相続人の最終本籍地を管轄する市区町村役場で取得します。本籍地出生から死亡まで遡る必要はありません。
遺言分割協議による相続の場合は下記の書類が追加で必要となります。
- 遺言分割協議書
- 被相続人が出生してから亡くなるまでの戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書
遺言分割協議書
相続人全員で行った遺産分割協議を経て作成します。相続人全員の署名押印が必要です。書式は法務局のホームページに掲載されています。(http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001215871.doc)
被相続人が出生してから亡くなるまでの戸籍謄本
被相続人の全ての相続人を明らかにするために必要となります。本籍地が移転している場合は、移転前の市区町村役場にも請求しなければなりません。
相続人全員の印鑑証明書
相続人の住民票がある市区町村役場で取得できます。
法定相続分による相続の場合は下記の書類が追加で必要となります。
- 被相続人が出生してから亡くなるまでの戸籍謄本
上記「遺言分割協議による相続の場合」に記載
※相続放棄をした人がいる場合
相続放棄をした人がいる場合は、「相続放棄申述受理証明書」が必要です。この証明書があれば、戸籍上相続人に該当していても、相続放棄をした人の戸籍謄本や印鑑登録証明書の提出は必要ありません。
法務局へ申請
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相続登記に必要な書類が揃ったら、法務局へ登記の申請をします。申請には次の3つの方法があります。
- 法務局の窓口での申請
- 郵送での申請
- オンラインでの申請
法務局の窓口での申請
「不動産登記係」という窓口で申請を行います。申請書に押印した印鑑も持参しましょう。
万が一不備があった場合の修正印として必要です。
郵送での申請
平日に法務局へ出向くことが難しい場合や法務局が遠方にある場合、郵送での申請も可能です。重要な書類となるので「書留郵便」で送付するようにします。
また、登記申請書に登記申請者全員の捨印を押しておくと良いでしょう。郵送の場合、窓口と違い申請書類の不備にその場で対応ができないので、訂正印としての「捨印」を押しておくことにより、その不備に柔軟に対応してもらえる場合があります。
オンラインでの申請
時間的な制約がある方はオンラインでの申請が便利です。オンラインでの申請の詳細は、法務局のホームページから確認できます。(http://www.moj.go.jp/MINJI/minji72.html)
それぞれの申請方法のメリット・デメリットをまとめました。
どの申請方法が自分に適しているか、参考にしてみてください。
メリット | デメリット | |
窓口での申請 | ・書類に不備があった場合、その場で対応が可能 | ・平日の開庁時間内に行かなければならない |
郵送での申請 | ・法務局まで行く必要がない | ・郵便局の営業時間内に行かなければならない
・郵送費用がかかる |
オンラインでの申請 | ・自宅でどの時間帯でも申請が可能
・書面での申請や提出に比べて、手数料が割安になるケースもある |
・窓口へ持参或いは郵送で提出しなければならない書類もある
・専用ソフトのダウンロードや、電子証明書の取得などパソコン操作に慣れていないと難しい |
登記完了予定日に受け取ることができる書類
登記申請から7~10日後が登録完了日となります。完了予定日に受け取ることができる書類は下記の3点です。
- 登記識別情報通知書
- 登記完了証
- 原本還付書類一式
登記識別情報通知書
不動産・申請人ごとに1通ずつ発行されます。
登記完了証
登記完了の証明書です。
原本還付書類一式
相続登記の際に使用した書類の原本の返却をしてもらえます。戸籍謄本等も含まれるので、他の手続きで必要になった場合再度使用することができます。
なお、郵送での受け取りを希望する場合は、登記申請書類にその旨記載し、「返信用封筒と返信用切手」を同封します。
まとめ
相続登記を怠ってしまうと、不動産を売却・担保にできない、相続が複雑化してしまうなど、トラブルに発展してしまう可能性があります。
なお、費用はかかりますが、司法書士や弁護士などの専門家に依頼するとスムーズに手続きを進めることができます。相続登記には必要書類も多く、相続人同士のやりとりも煩雑になるため、どうしても手間と時間を要してしまいますが、専門家に依頼するとほとんどの手続きを代行してくれます。
自分の子孫を不動産の相続のトラブルに巻き込まないためにも、不動産の相続が発生したら速やかに相続登記を済ませるようにしましょう。