リースバック活用時の税金対策【税金の基本から控除の仕組みまで徹底解説】
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不動産活用を通じた資金調達手段のひとつとして、”リースバック”という取引形態があることをご存じでしょうか?
自宅などの不動産を売却することで、まとまったお金(売却資金)を獲得するとともに、その後も継続して(賃貸借不動産として)利用できるという観点から、企業をはじめ一般個人の方にも広く利用されるようになってきている、リースバック。
この取引形態は決して最近できたものではなく、「セール・アンド・リースバック」として以前から企業等を中心としたビジネスシーンで活用されていました。近年の、一般個人の資金調達手段として普及した背景には、”シェアリング”の考えが広まってきていることが理由として挙げられるのかも知れません。
そして、これまでの資金調達方法といえば、住宅ローンなどが一般的だったかと思いますが、新たな選択肢が増えてきているのは喜ばしいことだともいえます。しかしながら、リースバックには”不動産の売却”という取引が含まれているため、この取引において税金が発生することとなります。
調達した資金が税金に回り、利用できなくなってしまうのでは損をした気分になってしまいますよね?
そこで、この記事ではリースバックの際に発生する際の税金に関して詳しく解説していこうと思います。ぜひ最後までご覧になってください。
リースバックの基礎知識
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本記事の冒頭にて、リースバックは「自宅などの不動産を売却することで、まとまったお金(売却資金)を獲得するとともに、その後も継続して(賃貸借不動産として)利用できる」とお伝えしましたが、このようなことを実現できるのは、リースバック取引では、売買契約と賃貸借契約が一体化して行われているからです。
特定の不動産の持ち主と取引の相手方が、売買契約上では売主(前の持ち主)と買主(新たな持ち主)、賃貸借契約上では借主(前の持ち主)と貸主(新たな持ち主)となることで、リースバック利用者側は不動産の継続した利用が可能となるのです。
リースバックの手続き
ここでは、リースバックがどのような手続きを踏んで進んでいくのかを抑えていきましょう。
リースバック手続きの主な流れは以下に示す通りとなります。
- リースバックを請け負っている専門業者への依頼(査定申込)
- リースバック専門業者による売却予定不動産の査定額算出
- (算出された査定額、売買・賃貸借契約で取り決める契約事項に納得いく場合)売買契約・賃貸借契約の締結
- 売却不動産の引渡し、売却不動産の所有権移転
- 賃貸借契約の契約内容に則った不動産の賃貸借利用
リースバックで踏まれる手続きは、どの業者も大抵このようになるかと思いますが、各段階の詳細やその時々で抑えておくべきポイント、それぞれで必要となる関係書類も理解しておけば、更にリースバックをスムーズに行うことができるかと思います。
特に、リースバックを活用して”長く”不動産を活用されたいとお考えの方は賃貸借契約に関して注意しておくべきポイントがいくつもあります。
これらの内容については、以下の記事にて詳しくご説明していますので、気になられた方はそちらにもぜひ目を通してみられてください。
『リースバック契約書の内容を紹介!売買・賃貸借契約書の詳細チェック』【マイホームまもり隊_公式】
不動産売却と税金
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リースバックの概要に関して理解を深めたところで、ここでは本題である”リースバックと税金”の仕組みに関して抑えていきましょう。
リースバックに限らず、不動産などの売却を行ったことで所得があった場合、この所得に対して所得税と住民税が掛かることとなります。
また、不動産の売却等で得た所得は一般的に譲渡所得という所得のカテゴリに分類されるため、この場合の所得税や住民税は譲渡所得税と総称されることもあります。
譲渡所得は以下のように計算されます。
『売却価格-(取得費用+譲渡費用)=譲渡所得』
式の中に登場する取得費用とは、売却予定不動産の持ち主が、当該の不動産を購入した際の代金から経年劣化による不動産の価値低下分を差し引いて算出した金額と、当該不動産を購入した当時、実際に不動産取得のために発生した諸費用を合算した費用のことを表しています。
また、譲渡費用は、売却予定不動産の持ち主が新たな持ち主へと譲渡するときに、実際に発生した諸費用のことを指しています。
更に、譲渡所得に課せられる譲渡所得税は、前持ち主(売却資金を獲得する側)の不動産の所有期間に応じて税率が変化することも抑えておく必要があります(以下の表を参照ください)。
土地・建物の所有期間 | 5年以下 | 5年超 |
所得税 | 30.63% | 15.315% |
住民税 | 9.0% | 5.0% |
◆譲渡所得税の計算例
15年前に購入した住宅が、2,500万円で売却することとなり、取得費用1,200万円、譲渡費用300万円であった場合、譲渡所得税は以下のようになります。
2,500万円(売却価格)-{1,200万円(取得費用)+300万円(譲渡費用)}=1,000万円(譲渡所得)
1,000万円(譲渡所得)×{15.315%(所得税)+5.0%(住民税)}=203万1,500円
リースバックにおける譲渡所得税
不動産売却時に発生する各種の税金に関しては先に触れた通りですが、リースバックの場合はどうでしょうか?
結論をいいますと、リースバックを利用した際に譲渡所得税が発生する可能性は限りなく小さいといわれています。
この理由には、リースバックによる売却価格は、一般的な不動産の売却価格と比較して割安な傾向にあるためです(※)。どの程度の売却価格(買取査定額)になるかは、リースバックを請け負っている不動産会社によって違いがありますが、場合によっては、通常の売却価格よりも数百万円近く安価な売却価格設定が行われることもあるようです。
そのため、結果的に譲渡所得がマイナス(売却損失)になり、譲渡所得税が掛からないことになるのです。
※一般的な不動産売却の価格相場と比較して、リースバックによる売却価格が割安になるという特徴は、リースバックのデメリットのひとつとして非常に有名です。以下の記事では、売却価格(買取査定額)をはじめとした、その後の賃貸借利用における家賃の相場、これらをできるかぎりお得な形にするための方法に関してもご紹介していますので、ぜひご覧になられてください。
『リースバック利用時の買取り・家賃の相場は?家賃の抑え方3選も紹介』【マイホームまもり隊_公式】
不動産売却と税制の特例
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リースバックの場合には、ほとんどのケースが譲渡所得税が掛からないということは先に触れた通りですが、もし仮に、計算例で示したように売却利益が出た場合にはどうでしょうか?
譲渡所得の大小や、売却予定不動産の所有期間によって変化はありますが、数着万円近くの税金が発生してしまうのは、資金を調達しようとしていた身からすると困りものですよね。
このような際には、自宅(※)を売却した際に適用可能な税制の特例を活用しましょう。リースバックによって売却利益が出た際に利用可能な特例には以下の2つがあります。
- 売却利益から3,000万円を控除することができる
- 自宅の所有期間が10年を超える場合には、軽減税率を適用することができる
それぞれに関して、具体的な数値を用いながら確認しておきましょう。
※後述する2つの税制の特例は”居住用財産(自宅など)”に発生した譲渡所得に対して適応されるものであり、企業等が所有するオフィス・工場・倉庫などの不動産は該当しないため、ご留意ください。
売却利益から3,000万円の控除
売却利益とは、上記の譲渡所得税の式で紹介した要素のうち、売却価格から取得費用を差し引いた金額のことを表しています。
そして、「売却利益から3,000万円を控除することができる」というのは、売却価格から取得費用を差し引いた金額から更に3,000万円を差し引いてよいものとする、ということを意味しています。
上記の計算例に合わせると、
『2,500万円(売却価格)-1,200万円(取得費用)-3,000万円(控除分)=△1,700万円(売却損失)』
ということになり、本来であれば売却利益であったものが売却損失となり、結果的に譲渡所得税が掛からないようになるのです。
売却利益をもとに考えましたが、
『売却価格-(取得費用+譲渡費用)=譲渡所得<3,000万円(控除分)』
と覚えておいてもらえれば十分に活用可能かと思います。
10年超の所有による軽減税率の適用
こちらは譲渡所得に発生する所得税と住民税の税率を引き下げる特例であるため、そもそも譲渡所得が発生しにくいリースバックにおいては3,000万円の控除と比較して活用が少ないかも知れませんが、これを機にぜひ覚えてもらえればと思います(加えて、3,000万円の控除との併用も可能となっています)。
具体的には、居住用不動産を売却時に所有期間が10年を超えていた場合には、譲渡所得の一部(6,000万円がボーダーとして定められています)の税率の引き下げが行われるようになっています。
実際の税率は以下の表をご確認ください。
譲渡所得 | 6,000万円以下の部分 | 6,000万円超の部分 |
所得税 | 10.21% | 15.315% |
住民税 | 4.0% | 5.0% |
◆軽減税率適用の計算例
仮に所得税が8,000万円であった場合、8,000万円のうちの6,000万円に関しては所得税10.21%、住民税4%となり、残りの2,000万円については所得税15.315%、住民税5%として譲渡所得税の計算が行われます。
6,000万円部分に関して:6,000万円×(10.21%+4.0%)=852万6,000円
残りの2,000万円に関して:2,000万円×(15.315%+5.0%)=406万3,000円
合計の譲渡所得税:852万6,000円+406万3,000円=1,258万9,000円
まとめ
リースバック取引の売買契約(不動産の売却)によって税金が発生する可能性と、各種税金の計算方法、税金を控除するための特例に関してご説明してきましたが、ご理解いただけたでしょうか?
リースバックは売買契約と賃貸借契約とを一体化させたことで、”売却によって売却資金を獲得しつつ、売却不動産を新たに賃貸不動産として活用し続ける”ということが可能となっていますが、リースバックの一連の手続きにおけるひとつひとつの取引は一般的な不動産売却や賃貸借と変わりありません。
つまりは、今回紹介したような税金の仕組みがリースバックでも適用されたり、賃貸借契約における賃貸借利用期間が一般のものと変わりなかったりと、抑えておくべきことが多様にあります。
この記事をきっかけに、読者の皆様がリースバックに関して更にご興味を示していただければ嬉しく思います。加えて、マイホームまもり隊ではリースバックの一括査定サービスをはじめサービスも豊富に揃えております。実際にリースバックをご検討する際には、ぜひともマイホームまもり隊へのご相談をお待ちしております。