住み替え住宅ローン利用時のポイント5つと利用しないで済む方法
住宅ローンを支払いながら長年住んでいる愛着のある我が家でも、事情や環境、立場などが変わって現在の条件と合わなくなり、住み替えが必要となる場合があります。
例えば、仕事で異動になり遠方に引っ越さなければならなくなった、子供が成長して手狭になった、高齢の親が心配なので近くに住んで見守りたい、ご近所トラブルがあり環境を変えたい、自身の老後のためなど。
人生と共に歩む「住居」は、その時々で姿や場所を変えなければならないときが多々あります。
しかし、住居は気軽な買い物では済みません。今ある住居をなるべく高く売り、数ある中から気に入る新居を探して購入する、その手続きは簡単ではないことは想像がつきますし、そもそも現住居のローンがまだ残っている、新居の頭金などの費用も心配、売ってから買うのか買ってから売るのか、など、心配事は山積みです。
そんな悩みを解決する方法のひとつとして、住み替え住宅ローンがあります。
ここでは、住み替え住宅ローンに関する手順や気を付けるべき点などをご紹介していきます。
住み替え住宅ローンとは?
事情があって住み替えたいと思うけれども、まだ現住居のローンを完済していなかったり、売却してもローンを返しきれなかったりする場合があります。
そんな時に利用できるのが住み替え住宅ローンです。
今返済している住宅ローンの残りと、これから購入しようとしている新しい住宅に必要な資金や仲介手数料などを、合わせて借りることができます。
「住み替えローン」、「買い替えローン」とも呼ばれています。
住み替え住宅ローンを利用する場合の流れ
まずは今の住宅ローンを返済している金融機関に、住み替え住宅ローンの利用を希望していることを相談しておきましょう。同じ金融機関で住み替え住宅ローンを組んでもらえると、流れがスムーズに運びます。
住居を売買する場合の一般的な流れは以下の通りです。
- 住居を売却する流れ
査定→不動産会社との契約→売却活動→売却契約→引き渡し
半年ほどかかります。
- 住居を購入する流れ
物件を探す→購入契約→支払い等手続き→入居
物件が見つかれば早くて1ヶ月ほどで決まります。
住み替え住宅ローンは、上記の流れを同時に進行しながら、住居の売却(ローンを完済する日)と購入(融資の実行日)の決済日を同日にする必要があります。
詳しくは後述します。
住み替え住宅ローンのメリット・デメリット
資金は無いけれども、どうしても住居を住み替えたい事情がある人にとっては便利な住み替え住宅ローン。ここではそのメリットとデメリットをそれぞれご紹介します。
メリット
住み替え住宅ローンの最たるメリットは、資金調達のしやすさに尽きます。
住み替え住宅ローンを利用すれば、自己資金の用意の必要がなく、現住居の残債を支払い売却を実現しつつ、売却益で賄えない分も同時にローンとして組み込めるので、新たな住居を手に入れることができます。
しかし、住み替え住宅ローンを利用せずに住み替えを行う場合、抵当権を外すためにローン残額を一括して支払う必要がでてきてしまいます。
このように、住み替え住宅ローンは、現住居のローンを抱えていても、住み替えに必要な資金をまるごとローンとして組み直せるので、資金調達の問題を解決することができるのです。
デメリット
住み替え住宅ローンのデメリットはいくつかあります。
- 売却と購入の決算日を同日にするためのスケジュール管理が大変。
- 通常の住宅ローン購入よりも金額が大きいので、金利が高くなる。
- 額が大きい分、審査が厳しい。
- いざ住み替え住宅ローンを利用する時に審査が通らなかったなどということもあるので、事前審査が必要。
デメリットはいくつかありますが、それでも一番難題である資金調達が大分楽になるので、住み替え住宅ローンが一番魅力的な解決法ということに変わりはありません。
住み替え住宅ローンを利用する時に気をつけるべきポイント
利用時は専門家が助力してくれるので心強い住み替え住宅ローンですが、それでも任せっきりにして「こんなはずじゃなかった」と後悔することのないように、気を付けるべきポイントが5つあります。
1.住居の売却と購入の決済日を同日にしなければならない
先ほども説明しましたが、住み替え住宅ローンを利用するには、旧住居の売却と新住居の購入の、決済日を同日にする必要があります。この日にちが違うと、金融機関は融資をしません。
都合よく同時に売却先が見つかって購入する住居が見つかればいいですが、現実はそうはいきません。スムーズに住み替えるためには、まずは売却か購入かのどちらかを優先しないと話が進みません。
難しそうですが、不動産会社や金融機関の担当者、そして司法書士や税理士と、それぞれの専門家が協力しながら進めていくことになりますし、現在居住している家とこれから購入する家を取扱う不動産会社を同じにすると、より楽に事が運びます。
2.審査基準が厳しい
住み替え住宅ローンは、新住居を購入する資金だけではなく、旧住居の残りのローンも含めて融資を受けることになるので、金額が大きくなります。
当然、金利も普通の住宅ローンに比べて高くなりますし、審査基準も普通の住宅ローンより厳しくなります。
事前審査をして、住み替え住宅ローンが確実に利用できるか確認することが不可欠です。
他にも、住み替え住宅ローン利用時のほとんどは、債務者に何かあった時に全額返済してくれる団体信用保険への加入が条件になっていますが、健康状態が良くないと加入できないので、その場合も審査が通りません。
3.住み替え時に旧住居が売却できない場合がある
住居を、売却するには約6ヶ月、購入するには約1ヶ月ほどかかることは住み替え住宅ローンを利用する場合の流れで説明しました。
住居を住み替える際の手順に、旧住居の売却に重点を置く売り先行と、新住居の購入に重点を置く買い先行がありますが、買い先行だと新住居が決まった(住み替えなければいけない)時点で、旧住居が売れない可能性があります。
かといって売り先行だと、希望の時期に住み替えができない可能性も出てきます。
どちらの方法が最も希望に沿えるのか、十分に考える必要があります。
4.返済の延滞履歴があると審査が通らない
住宅ローンに限らず、自動車ローンやクレジットカードの借り入れ額などの確認も行われます。借り入れ総額ももちろんですが、支払い履歴に延滞や未払いの記録が残っていると審査が通らない可能性があります。
個人信用情報は5年経つと古い情報から消えていくと言われているので、履歴に心当たりがあっても5年以上前であれば問題ないかもしれませんが、希望の時期には住み替えができない可能性もあるということを覚えておきましょう。
5.購入するのは住宅が条件
あくまでも、住居としての住み替えが条件です。
旧住居を売却後に賃貸住宅や実家の持ち家で暮らすなどという場合や、新住居に自分が居住するのではなく賃貸物件として使用するという場合も利用できません。
住み替え住宅ローンを使わないで住み替える
では、住み替え住宅ローンを使わない、使えない場合にはどのような方法で住み替えができるでしょうか?
つなぎ融資を使う
つなぎ融資とは、すでに完成している住居を購入する際に、便利に利用できる融資です。
住み替えの場合は、新住居の購入資金としてつなぎ融資を受け、その後、旧住居の売却金でつなぎ融資を一括で返済するという使い方になります。
つなぎ融資は住宅ローンよりも金利が高いうえ、融資の期間が短く、6ヶ月~1年以内が基本です。返済期日までに旧住居に希望価格での買い手がつかない場合、安く叩き売らなければならない可能性も出てきますので、利用の際は十分に検討しなければいけません。
ダブルローンにする
売却と購入の両方のローンをそれぞれ組むダブルローンですが、総額が大きくなるため、新居購入の際の審査は厳しくなります。
しかし住み替え住宅ローンを利用する時のように売却と購入の決済日を揃える必要がなく、引っ越しのタイミングが合わず仮住居を用意するコストなどがかかりません。
新住居入居後の旧住居の売却活動でも、居住中の内覧ではなく空き家にしてアピールすることができます。
しかし月々の返済額が大きくなるため、生活がひっ迫する危険性があります。
リースバックを利用する
リースバックとは、住居を売却して現金化した上で、その住居を賃貸として契約を結び、家賃を払いながらそのまま住み続けられるという方法です。
まとまった資金も手に入り、スケジュールを気にすることなく新住居を探すことができます。
また、新住居の購入の際は通常の住宅ローンが組めるので、難題が多い住み替え住宅ローンよりハードルが低くて安心です。
転勤など期限がある場合は不向きですが、老後の準備など時間に余裕がある場合には都合がいい方法といえるでしょう。
まとめ
住み替え住宅ローン利用時の流れやポイント、利用しないで済む方法などをご紹介いたしましたが、いかがでしたか?
住み替え住宅ローンは、住宅の住み替え時に誰もが直面する資金問題をまとめて解決してくれる仕組みですが、条件によっては利用できない場合や、他の方法をとった方が良い場合もあります。
人生の中でも何度もある訳ではない大きな買い物になりますので、希望する売却額や、住み替えるタイミング、向いている方法など、十分に検討したうえでのご利用をおすすめします。
そして、借り過ぎないようにすることが一番重要です。この記事が、大事な住居の住み替え時の参考になれば幸いです。